足し算の作法
①自然数の仕組みがわかる
自然数とは次のような数である。
(最初の数)、(最初の数の次の数)、(最初の数の2回次の数)、(最初の数の3回次の数)、……
ここでは、最初の数を0とする。また、0のn回次の数をnと呼ぶことにする。
②足し算の意味が分かる
m+nが「mのn回次の数」であることがわかる。
子供がわかっているか確かめるには、足される数がある程度大きく、足す数が小さいときに足し算ができるか確かめればよい。注意、このとき、指を使っても構わない。
例、8+1,11+1,26+1,8+2,11+2,26+2
③0を足しても変わらない
n+0=n
④入れ替えても同じであることがわかる。
m+n=n+mであることがわかる。
(証明)
m+n=(mのn回次の数)=((0のm回次の数)のn回次の数)=((0のn回次の数)のm回次の数)=(nのm回次の数)=n+m
(証明終了)
子供に説明するときには具体的に1+2=2+1のように簡単な数で証明すればいいでしょう。
1+2=(1の2回次の数)=(0の次の2回次の数)=(0の2回次の次の数)=(2の次の数)=2+1
要は1回次の2回次も2回次の1回次も結果的には同じだということが「数えないで」わかるということです。なぜなら、入れ替えても3回次より増えたり減ったりすることはないからです。
⑤どこから足してもよいことがわかる
(m+n)+o=m+(n+o)であることがわかる。
(証明)
「aのm回次の数」を(a)f、「aのn回次の数」を(a)g、「aのo回次の数」を(a)hとする。
(m+n)+o=(((0のm回次の数)のn回次の数)のo回次の数)=(((0)f)g)h
m+(n+o)=(n+o)+m=(((0)g)h)f=(((0)g)f)h=(((0)f)g)h
(証明終了)
⑥合計が4以下になる足し算
④で足し算は入れ替えても同じということがわかったので、
ここで学習すべきは
1+1,2+1,3+1,2+2,のたった4つです。(残りは入れ替えればこの4つのどれかになります)ですので、覚えてしまいましょう。ただし、実際に覚えてほしいのは2+2=4だけです。残りは②がわかっていればすぐに答えられるはずです。繰り返し練習して素早く答えられるようになってください。指から卒業できたらオッケーです。注意、1+2,1+3,も練習してね。
ヒント
1+2=2+1,
1+3=3+1
⑦5と1から5までの数の足し算
5+1,5+2,5+3,5+4,5+5
これも覚えてしまいましょう。
⑧10と一桁の数の足し算
10+1=11
10+2=12
10+3=13
10+4=14
10+5=15
10+6=16
10+7=17
10+8=18
10+9=19
0を足す数に置き換えればいいので簡単ですね。
⑨繰り上がりのない足し算
(1)6+1, 7+1,8+1,6+2, 7+2,6+3の6つのやり方。
例、6+2
まず、5より大きい数(この場合6)を5+nの形に直します。(6=5+1)そして③を使って小さい数どうしを足します。(6+2=(5+1)+2=5+(1+2)=5+3)④を使って5との足し算をします。5+3=8よって、6+2=8
以下、回答。
6+1=(6の次の数)=7
7+1=(7の次の数)=8
8+1=(8の次の数)=9
6+2=(5+1)+2=5+(1+2)=5+3=8
7+2=(5+2)+2=5+(2+2)=5+4=9
6+3=(5+1)+3=5+(1+3)=5+4=9
(2) 4+1,3+2,4+2,3+3, 4+3,4+4の6つのやり方。
ここは少し難しいです。まず、足される数を5に置き換えてしまいます。すると式の答えは当然元の式の答えの次か次の次になります。ですから、足す数を進んだ分だけ前に戻します。
以下、回答。
4+1=(4の次の数)=5
3+2→→5+2←←(3から5まで2つ進めたので、2を2つ前に戻す)5+0=5
4+2→5+2←5+1=6
3+3 →→5+3←←5+1=6
4+3→5+3←5+2=7
4+4→5+4←5+3=8
⑩繰り上がりのある足し算
9+1,
8+2,9+2,
7+3,8+3,9+3,
6+4,7+4,8+4,9+4
5+5,6+5,7+5,8+5,9+5,
6+6,7+6,8+6,9+6,
7+7,8+7,9+7,
8+8,9+8,
9+9
少し多いですが、やり方はこれまで通りです。とりあえず5より大きい数を見たら5+nに分解しましょう。5が2つつくれたら、5と5から足していきます。
以下、回答。
9+1=(9の次の数)=10
8+2=(5+3)+2=5+(3+2)→→5+(5+2) ←←5+(5+0)=(5+5)+0=10+0=10
9+2=(5+4)+2=5+(4+2)→5+(5+2)←5+(5+1)=(5+5)+1=10+1=11
7+3=(5+2)+3=5+(2+3)=5+(3+2)→→5+(5+2)←←5+(5+0)=(5+5)+0=10+0=10
8+3=(5+3)+3=5+(3+3)→→5+(5+3)←←5+(5+1)=(5+5)+1=10+1=11
9+3=(5+4)+3=5+(4+3)→5+(5+3)←5+(5+2)=(5+5)+2=10+2=12
6+4=(5+1)+4=5+(1+4)=5+(4+1)→5+(5+1)←5+(5+0)=(5+5)+0=10+0=10
7+4=(5+2)+4=5+(2+4)=5+(4+2)→5+(5+2)←5+(5+1)=(5+5)+1=10+1=11
8+4=(5+3)+4=5+(3+4)=5+(4+3)→5+(5+3)←5+(5+2)=(5+5)+2=10+2=12
9+4=(5+4)+4=5+(4+4)→5+(5+4)←5+(5+3)=(5+5)+3=10+3=13
5+5=10
6+5=(5+1)+5=5+(1+5)=5+(5+1)=(5+5)+1=10+1=11
7+5=(5+2)+5=5+(2+5)=5+(5+2)=(5+5)+2=10+2=12
8+5=(5+3)+5=5+(3+5)=5+(5+3)=(5+5)+3=10+3=13
9+5=(5+4)+5=5+(4+5) =5+(5+4)=(5+5)+4=10+4=14
6+6=(5+1)+(5+1)=*1+1=(5+(5+1))+1=*2+1=(5+(5+2))+1=*3+1=(5+(5+3))+1=*4+1=(5+(5+4))+1=*5+2=(5+(5+2))+2=*6+2=(5+(5+3))+2=*7+2=(5+(5+4))+2=*8+3=(5+(5+3))+3=*9+3=(5+(5+4))+3=*10+4=(5+(5+4))+4
=((5+5)+4)+4=(5+5)+(4+4)→(5+5)+(5+4)←(5+5)+(5+3)=10+8=18
⑪まとめ
全部答えられるかな?
0+0,0+1,0+2,0+3,0+4,0+5,0+6,0+7,0+8,0+9,
1+0,1+1,1+2,1+3,1+4,1+5,1+6,1+7,1+8,1+9,
2+0,2+1,2+2,2+3,2+4,2+5,2+6,2+7,2+8,2+9,
3+0,3+1,3+2,3+3,3+4,3+5,3+6,3+7,3+8,3+9,
4+0,4+1,4+2,4+3,4+4,4+5,4+6,4+7,4+8,4+9,
5+0,5+1,5+2,5+3,5+4,5+5,5+6,5+7,5+8,5+9,
6+0,6+1,6+2,6+3,6+4,6+5,6+6,6+7,6+8,6+9,
7+0,7+1,7+2,7+3,7+4,7+5,7+6,7+7,7+8,7+9,
8+0,8+1,8+2,8+3,8+4,8+5,8+6,8+7,8+8,8+9,
9+0,9+1,9+2,9+3,9+4,9+5,9+6,9+7,9+8,9+9
お疲れ様でした。
*1:5+1)+5)+1=(5+(1+5
*2:5+5)+1)+1=(5+5)+(1+1)=10+2=12
7+6=(5+2)+(5+1)=((5+2)+5)+1=(5+(2+5
*3:5+5)+2)+1=(5+5)+(2+1)=10+3=13
8+6=(5+3)+(5+1)=((5+3)+5)+1=(5+(3+5
*4:5+5)+3)+1=(5+5)+(3+1)=10+4=14
9+6=(5+4)+(5+1)=((5+4)+5)+1=(5+(4+5
*5:5+5)+4)+1=(5+5)+(4+1)=10+(4の次の数) =10+5=15
7+7=(5+2)+(5+2)=((5+2)+5)+2=(5+(2+5
*6:5+5)+2)+2=(5+5)+(2+2)=10+4=14
8+7=(5+3)+(5+2)=((5+3)+5)+2=(5+(3+5
*7:5+5)+3)+2=(5+5)+(3+2)→→(5+5)+(5+2)←←(5+5)+(5+0)=10+5=15
9+7=(5+4)+(5+2)=((5+4)+5)+2=(5+(4+5
*8:5+5)+4)+2=(5+5)+(4+2)→(5+5)+(5+2)←(5+5)+(5+1)=10+6=16
8+8=(5+3)+(5+3)=((5+3)+5)+3=(5+(3+5
*9:5+5)+3)+3=(5+5)+(3+3)→→(5+5)+(5+3)←←(5+5)+(5+1)=10+6=16
9+8=(5+4)+(5+3)=((5+4)+5)+3=(5+(4+5
*10:5+5)+4)+3=(5+5)+(4+3)→(5+5)+(5+3)←(5+5)+(5+2)=10+7=17
9+9=(5+4)+(5+4)=((5+4)+5)+4=(5+(4+5
足し算という宇宙
実際、足し算で躓く子供は多い。足し算のできる大人からみれば何でこんなところで?と思うかもしれないが、実は足し算は難しいのだ。
今回はいかに足し算が難しいことか、について語ってみる。
「3個の飴と2個の飴、合わせて何個ですか?」……(*)
この質問に答えるには、以下の2つの方法がある。
①合わせて数えること
一般に、初めて足し算にふれるとき、合わせて数えることから始める。合わせて数えるとは、例えば(*)の問題に対して、実際に3個の飴と2個の飴を別々に用意して2つを合わせて1,2,3,4,5と数える方法だ。
②ある数の、次の次の……としていって、答えを見つけること
具体的には、(*)の問題に対して、3の次は4,4の次は5として答えを出す方法だ。
多くの大人は足し算を①だと考えているようだ。しかし、①の方法は数が大きくなればなるほど実際に数えるのは難しい。一方で、②の方法ならばどんなに大きな数の足し算でも「足される数の足す数回次の数」とすぐに答えがわかる。例えば
300+200
であれば、答えは「300の200回次の数」である。実際の足し算では、それが500であることまで求めなければならない。しかし、それはかけ算と簡単な足し算さえわかっていればそれほど難しいことではない。
300+200=(3+2)×100=5×100=500
では、何が子供にとってそんなに難しいのか?ずばり言う。①の方法と②の方法の答えが一致することに気づくことである。これははっきり言ってかなり難しい。それくらい①の方法と②の方法の間には大きな溝がある。
数を数えられるようになったばかりの子供にとって、3個の飴はやはり3個の飴でしかない。①の方法はそれでもできる。しかし、②の方法でも(*)が解けることを理解するには、3個の飴を数の3と対応させる必要がある。足し算は実は十分に抽象的な数学なのだ。3と対応させることで初めてその次の次の数を考えることができる。そして出てきた数、5が5個の飴と対応することに気づいて初めて②の方法が理解できる。
中学になっても指を使って足し算をする子供が少数かもしれないが、確かにいる。筆者は、そういう子供は①の方法で足し算をしているとおもう。おそらく、その子は(*)の問題をまず左手の3本の指を立て、右手の2本の指を立て、1,2,3,4,5と数えて解くのだろう。指から卒業するには②の方法を身につける必要がある。つまり、まず3本の指を立て、次に、4,5と続きから数えながら指を立てる。これで解くことができれば、簡単な足し算が暗算でできる日はそう遠くないはずである。
最後に、大人が足し算を教えるときの心構えについて書いておこう。足し算に初めてふれる子供にとって、それはいわば未知との遭遇である。当たり前だとおもわずに、丁寧に教えてあげよう。そしてわからない子には、わかるまで付き合ってあげることが大切だとおもう。私はすべての子が算数ができるようになると信じている。
数学を哲学する
「数学とは何か?」
このブログの究極の目的はこの質問に対する答えを見つけることである。ところで、数学者たちはこの質問に対する答えを知っているのだろうか?おそらく、誰をも納得させることができるような答えは知らないはずである。いや、数学者たちには知りようがないのだ。なぜなら、数学とは定理を証明することであり、われわれ人間がなぜ、定理を証明するのか、考えることではないからである。では、この質問に答えうる学問とは何か?それはもちろん、哲学のみである。哲学とは、ありとあらゆる対象について考えることである。もちろん、数学について考えることは哲学である。
ところで、私は数学を理解したいと思っている。ゆえに、私は数学者である。そしてもちろん、哲学者でもある。私は数学の様々な定理を証明するだけでは満足しない。数学を理解するには、もっと広く、数学自身についても考えねばならないはずだ。
数学を哲学することは、もちろん、数学の発展において必要不可欠である。人間は、古来より数学を創り続けている。ところで、数学とは、誰が創っても同じものにならなければならない。つまり、数学にはあるべき姿がある。もし、その姿を知らない人がデタラメに数学を創ってしまったとしたら、それはもはや数学ではない。数学は、常に哲学者たちによって、そのあるべき姿が模索されながら発展してきた。
よって、このブログはもちろん哲学的ブログであるが、その目的は数学のあるべき姿を探求すること、また、数学を発展させることにある。よって、このブログは数学的ブログである。
余談だが、筆者は数学を愛している。読者はその愛をこのブログのいたるところで見つけることになるであろう。